平成25年〔民法〕〔設問1〕(1) 答案例②

甲債権を取得する時期

 動産や不動産の譲渡担保の法的性質について担保権であると考えれば、将来債権譲渡担保においても、譲渡担保実行のとき、つまりAに対して取立権限を喪失させる旨を通知した平成25年5月7日にBが甲債権の所有権を取得するとも考えられる。

 しかし、物権の対象は物であり、物とは有体物をいう(85条)ところ、債権は有体物ではないから、これを対象とする物権を観念することはできない。したがって、動産や不動産の譲渡担保の法的性質論は、債権譲渡担保における債権の移転時期とは関係がない。

 ただ、AとBは、融資金の返済が滞って取立権限を喪失させる旨の通知がされるまでAのみが債権を取り立てることができる旨合意しているのであるから、その通知があるまでは債権はAに帰属しているとも考えられる。

 しかし、AとBは、あくまで平成25年1月11日の時点で譲渡する旨合意しているのであるから、債権の移転時期は譲渡の時点であって、融資金の返済が滞って取立権限を喪失させる旨の通知がされるまでAのみが債権を取り立てることができる旨の合意は、Bに帰属した債権の一部について、Aに取立権限を付与し、取り立てた金銭のBへの引き渡しを要しないとの合意であると解するべきである。

 以上より、甲債権の移転時期も、平成25年1月11日の時点である。