平成25年〔民法〕〔設問1〕(2) 答案例

 Cは、AとDとの間で甲債権について免責的債務引受けがされているから、債務を負っていないとして支払いを拒絶することが考えられる。

 前提として、債務者の関与なしにされた免責的債務引受けも有効である。債務者はこれによって利益を受けるだけであるし、債務免除は債権者の一方的意思表示でできるものだからである。

 しかし、免責的債務引受けがされるより前に、AはBに対して担保のために債権を譲渡している。設問1(2)で述べたとおり、譲渡の時点で甲債権もBに移転しているとすれば、免責的債務引受けの時点ではAは債権者ではなく、債務免除をする権限がない以上、免責的債務引受けも無効である。そうすると、Cは、甲債権について請求を拒絶できないとも考えられる。

 しかし、Fは、Aを債務者として甲債権を差し押さえたのであるから、Fが行使できるのはAを債権者とする甲債権である。甲債権の債権者がAとするならば、Aには債務免除をする権限があったということであるから、Dとした免責的債務引受けは有効である。

 以上より、Cは、免責的債務引受けがされたことを論拠として請求を拒絶することが考えられる。