平成25年〔民法〕〔設問1〕(1)  ノート⑤

 引き続いて最判平成11年1月29日は、「将来の一定期間内に発生し、又は弁済期が到来すべき幾つかの債権を譲渡の目的とする場合には、適宜の方法により右期間の始期と終期を明確にするなどして譲渡の目的とされる債権が特定されるべきである。」としています。

 ①「将来の一定期間内に発生」する債権と②「(将来の一定期間内に)弁済期が到来すべき」債権とは、一応区別することができます。例えば、債権譲渡契約後に物を販売した場合の売買代金債権は①、債権譲渡契約前に既に物は販売していたけど、売買代金の支払時期は債権譲渡後である場合は②です。本問の甲債権は①にあたります。

 最判は、「適宜の方法により右期間の始期と終期を明確にするなどして譲渡の目的とされる債権が特定されるべきである。」と「など」とあることからして、「右期間の始期と終期を明確にする」は例示です。したがいまして、答案で「期間の始期と終期を明確しなければならない」と書きますと、間違いとはいえませんが、判例ではない、ということになると思います。別に答案で一言一句判例の文言そのまま書かなければいけない、ということはないと思います。それでは暗記力試験になってしまいます。ただ、表現が違うと内容も異なってくる場合があるということは理解しておいた方がいいと思います。

 結局、最判のここまでの部分は「(契約が有効になるにはその内容が特定されている必要がある。)債権譲渡契約も目的とされる債権が特定されている必要がある。将来債権譲渡の場合も目的とされる債権が特定されている必要がある。」といっているだけで、「右期間の始期と終期を明確にするなどして」は例示であるということになります。