平成25年〔民法〕〔設問1〕(1)  ノート⑧

 話は将来債権譲渡の有効性の論点に戻ってしまいますが、最高裁判例解説民事編平成11年度(上)によれば、最初期の学説では、将来債権譲渡契約の効力が比較的広く認められていたようですが、朝鮮高等法院判昭和15年5月31日が「債権発生ノ基礎タル法律関係カ既ニ存在シ且其ノ内容ノ明確ナル限リ将来ノ債権ト雖之ヲ譲渡スルニ妨ナキモノト謂フヘ」きであると判示し、学説上もこの法律的基礎説が有力になったとのことです。

 将来債権譲渡無効説という説があったかどうかは定かではありません。しかし、まだ債権が発生しておらず、存在しない以上、存在しないものを譲渡することは観念できない、との理由で将来債権譲渡を否定する考えも理論的にはありうるように思われます。そのため、債権発生の法律的基礎があればその限りで将来債権譲渡を認めていい、という説が登場したのではないでしょうか。

 ただ、現在では、将来債権譲渡が有効であることは学説上も異論はない、ということのようです。存在していないものを譲渡することはできない、という形式的な理屈は説得力がない、当事者が将来債権を譲渡するという合意をしているんだからそのとおり効力を認めていいんだ、ということなのでしょう。