平成25年〔民法〕〔設問1〕(1)  ノート⑥

 前掲最判平成11年1月29日に戻りますと、最判平成11年1月29日は、「右契約の締結時において右債権発生の可能性が低かったことは、右契約の効力を当然に左右するものではないと解するのが相当である。」といっています。「当然に左右するものではない」という言い回しからすると、債権発生の可能性の高低が将来債権譲渡契約の効力に影響があるのか、定かではありませんが。

 引き続いて、最判平成11年1月29日は、「もっとも、契約締結時における譲渡人の資産状況、右当時における譲渡人の営業等の推移に関する見込み、契約内容、契約が締結された経緯等を総合的に考慮し、将来の一定期間内に発生すべき債権を目的とする債権譲渡契約について、右期間の長さ等の契約内容が譲渡人の営業活動等に対して社会通念に照らし相当とされる範囲を著しく逸脱する制限を加え、又は他の債権者に不当な不利益を与えるものであると見られるなどの特段の事情の認められる場合には、右契約は公序良俗に反するなどとして、その効力の全部又は一部が否定されることがあるものというべきである。」といっています。この部分は、「特段の事情の認められる場合には」との言い回しからすると、何か将来債権譲渡特有の無効原因を判示したかに見えますが、「公序良俗に反するなどとして」という点からすると、単に公序良俗違反(民法90条)や詐害行為取消(民法424条)などによって将来債権譲渡契約の効力が否定される場合がある、という当たり前のことをいっているに過ぎない、ということになろうと思います。

 

(公序良俗)
第90条

公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。

 

(詐害行為取消権)
第424条1項

債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした法律行為の取消しを裁判所に請求することができる。ただし、その行為によって利益を受けた者又は転得者がその行為又は転得の時において債権者を害すべき事実を知らなかったときは、この限りでない。